岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 産科・婦人科学教室

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ヘルスケア外来

診療内容

産婦人科は、女性の一生を通じて診療を行う科です。
当院ではこれまでも月経異常や更年期障害などの女性特有の病気に対し治療を行ってまいりましたが、周産期・婦人科腫瘍・生殖内分泌の基本領域全てに深く根ざしている「女性のヘルスケア」の重要性を考え、女性の健康増進や、従来は看過されてきた産婦人科疾患治療後の諸問題も包括した「ヘルスケア外来」を新たに創設することといたしました。

岡山大学病院産科婦人科「ヘルスケア外来」での診療

岡山大学病院産科婦人科「ヘルスケア外来」の診療では、次のような症状においてお困りの患者さんが診療の対象です。

1.思春期から性成熟期の「女性のヘルスケア」

  • 月経関連疾患(月経困難症、子宮内膜症、月経前症候群)
  • 卵巣機能不全・無月経(早発閉経、がん治療後)
  • 性器の異常[DSD(性分化異常)、 GVHD(移植片対宿主病)フォローアップ]
  • 女性アスリートのヘルスケア
  • 他科疾患合併女性のヘルスケア

2.更年期から閉経後の「女性のヘルスケア」

  • 更年期症候群・自律神経失調症
  • 骨粗鬆症
  • 骨盤臓器脱(POP)
  • 排尿障害(過活動膀胱 尿失禁)

3.産科合併疾患の「女性のヘルスケア」

  • 健康増進(妊娠糖尿病・妊娠高血圧症候群フォローアップ 高度肥満)
  • 周産期メンタルヘルス

各患者さんには、個人の状況やご希望に沿った治療法を提案して参ります。それぞれの分野を得意とする医師が実際の診療に当たりますが、個々の治療方針は、各診療医の専門領域、すなわち周産期・婦人科腫瘍・生殖内分泌の枠を超えたチームにて決定して参ります。すでに当院を受診されている方も、これから受診を考えている方もどうぞお気軽にご相談ください。

対象疾患

月経関連疾患(月経困難症、子宮内膜症、月経前症候群)

子宮内膜症は骨盤痛(月経痛、排便痛、性交痛)と不妊を主症状とする20-40歳台の女性特有の病気です。子宮腺筋症では、さらに過多月経による貧血を認めることもあります。また症状が進むと、月経(生理)の時期だけでなく慢性的な下腹部痛や腰痛の原因となり、生活の質(QOL)を著しく損ねることになります。当科では子宮内膜症・子宮腺筋症に対するさまざまな治療法を提供するだけでなく、病気の早期発見を目指しています。また研究成果につきましても、関連の学会で報告しております。
 毎月の月経(生理)前に決まって起こるイライラやうつなどの症状を月経前症候群(PMS)といいます。軽い症状は比較的多くの女性にみられますが、仕事や家事が手につかなくなり、家庭内や職場でトラブルを起こしているような女性には専門的な治療が必要です。当科では、PMSと診断された患者さん一人ひとりに見合ったさまざまな治療法を提案し、生活の質(QOL)の向上を目指しています。

卵巣機能不全・無月経(早発閉経、がん治療後)

18歳になっても初経の無い場合を「原発性無月経」といいます。性器の異常や染色体異常を半数の症例で認めますので治療が必要です。ここで大切なのは、初経が来るのを18歳まで待つ必要は無いことです。高校生になっても初経が無いようでしたら、早めの産婦人科受診をお勧めいたします。
女性の閉経年齢は平均50.5歳ですが、女性の1%は40歳までに、0.1%は30歳までに閉経します。43歳までに閉経した場合を「早発閉経」とよび、生活の質(QOL)の向上のためにもホルモン補充療法などの治療が必要です。
また婦人科のがんやその他のがん治療の結果、卵巣の働きが著しく低下したり、閉経してしまうことがあります。これらのがん治療後の女性に対しても、適応があればホルモン補充療法などの治療を行っております。

性器の異常[DSD(性分化異常)、GVHDフォローアップ]

外陰部や腟(ちつ)の形態の異常は、生まれつき「卵巣・精巣や性器の発育が非典型的である状態」である性分化疾患(disorders of sex development, DSDs)と、出生後の炎症や外傷などによるものに分類されます。
子宮や腟などの女性器は胎児期に(母親の子宮の中で)発生し分化していきますが、その過程の異常によりさまざまな病態を呈します。また同時に腎尿路系の奇形を合併することもあります。DSDsの多くは新生児期に診断されますが、2次性徴(思春期)の開始とともに見つかるものもあります。外陰部の形態異常は、思春期以降に心理的な影響をもたらす可能性があります。また腟の形態異常は月経困難症や下腹部痛、無月経を伴うだけでなく、将来の性交・妊娠・出産に多大な影響を及ぼします。
また近年、白血病などの血液腫瘍患者さんに対する造血幹細胞移植(骨髄移植など)の副作用であるGVHD(移植片対宿主病)が、救命率の向上とともに起こる新たな問題として注目されています。すなわちGVHDにより腟炎、外陰炎が発生すると、その結果として起こる腟閉鎖や外陰癒着は性交障害の原因になります。
当科では個々の患者さんに対して最適な治療計画を立てたうえで、ライフスタイルに合わせた治療を行っております。またこれらの手術につきましては、国内でもトップクラスの治療実績を有しています。

女性アスリートのヘルスケア

女性アスリートの健康管理上の問題点として、「low energy availability(利用可能エネルギー不足)」「無月経」「骨粗鬆症」があり、これらは「女性アスリートの三主徴」と呼ばれ、最近注目されています。「女性アスリートの三主徴」は、継続的な激しいレーニングが誘因となり、それぞれの発症が相互に関連し重要な問題です。具体的には、食生活においては、バランスのとれた、運動によるエネルギー消費量に見合った十分なエネルギー摂取の指導エストロゲン・プロゲスチン配合剤(いわゆるピル)を用いた月経管理や、骨量測定などによる骨折リスクの評価や予防が必要です。当院では専門家チームによるその方にふさわしい方法でサポートいたします。

女性アスリートの三主徴

更年期症候群・自律神経失調症

閉経前後にみられる動悸、体のほてりやのぼせ、イライラ、不眠や集中力低下などといった症状を更年期症候群(更年期障害)と呼びます。また20、30歳代の女性や60歳以上の女性に同様な症状を認めた場合は、更年期ではないので「自律神経失調症」の可能性を考慮します。女性に多い甲状腺機能異常や自己免疫疾患などを除外した上で、ホルモン補充療法、漢方療法もしくは運動療法など多岐にわたる綿密な治療を行います。

更年期症候群・自律神経失調症の症状

骨粗鬆症

年齢別の骨粗鬆症発生率

女性ホルモン(エストロゲン)は、妊娠出産後は一過性に、また40歳代では卵巣機能が衰え始めることで分泌が低下し始めます。そして閉経すると、急激に骨量が減少します。エストロゲン剤の使用により、更年期症候群(更年期障害)が改善することはよく知られておりますが、閉経後の骨量減少を抑制することで病的骨折の頻度が減少することも知られております。当外来では患者さんの背景に合わせて適切な治療を行います。

骨盤臓器脱(POP)・排尿障害(過活動膀胱、尿失禁)

子宮下垂・子宮脱

日本における骨盤臓器脱・尿失禁の頻度は、健康成人女性の約25%, 出産経験者の約40%といわれております。骨盤臓器脱 stage III から IV(子宮が腟から出ている状態)では、排尿・排便困難が生じる可能性が高く、生活に多大な悪影響を与えます。手術する方法としない方法がありますが、個々人にあった治療法を適切に選択することが必要です。当科では骨盤臓器脱に対する腟式手術を行っております。また、軽度の子宮脱でも排尿関連のトラブルを認める場合は漢方や理学療法、専門薬、ホルモン補充療法を行っております。ご不安があれば一度ご相談ください。

健康増進(妊娠糖尿病・妊娠高血圧症候群フォローアップ、高度肥満)

非妊娠時には何ら問題のなかった女性が妊娠中に糖尿病 (DM)の状態になってしまうことがあり、これを妊娠糖尿病(GDM)といいます。母児に対する様々なリスクはもちろん、将来的にGDM女性の出産後5年以内の糖尿病発症率は20%ともいわれ、糖尿病発症リスクは既往のない女性の7倍以上となります。
普段全く血圧が高くない女性が妊娠時にいきなり高血圧を呈し、悪化による命の危険性があるのが妊娠高血圧症候群(HDP)です。そしてこのHDPも、将来の高血圧発症リスクが既往のない女性の3倍以上、虚血性心疾患の発症リスクも2倍以上となります。
また高度肥満は、妊娠中、母体および胎児に種々の合併症を引き起こす原因となることが知られており、BMI(肥満度)が高いほどこれらの合併症のリスクは高くなります。したがって、妊娠前から適正な体重を維持することは、安全な妊娠・出産のためにとても大切ですし、産後の体重のフォローや減量が重要です。
以上から、当院で出産された、上記に当てはまる方は、その後も疾病を発症させないように当院での定期的な予防的管理をお勧めしております。出産された際、入院中にスタッフから説明がありますので、ご検討ください。

  • GDMイメージ
  • HDPイメージ
  • 日本における闘病病患者数の推移
  • GDMの発生と肥満との関連性

周産期メンタルヘルス

マタニティーブルーズ

出産後に軽度の抑うつ症状が出現し、出産後3~5日に症状がピークとなりますが、その後は経過良好であり10日も経てば自然と症状は消えていきます。様子をみることで問題ないため積極的な治療は行われません。

産後うつ病

出産後数週間~数か月経ってから抑うつ症状が生じ、2週間以上続くものです。専門的な治療を必要とします。マタニティブルーズから移行する場合もありますので、症状がよくならない場合は病院を受診した方が良いでしょう。

死産後のケア(グリーフケア)

大切な赤ちゃんを亡くしたとき、お母さんは悲しみや喪失と立ち直りの思いとの間で、とても不安定な状態になります。そのような方に寄り添い、援助することをグリーフケアと言います。日常ではつい後回しになりがちなお母さんのこころのケアを、入院中から退院後も継続して行っています。

出産後、女性の体では急激な内分泌変化がおこり、妊娠前の状態に回復するまでかなりの時間がかかります。心理的には母親になった喜びを自覚する一方、育児中心の生活に当惑し、精神的に負担のかかる時期を迎えます。例えば気分が落ち込みがちになったり、自然に泣けてきたりすることもあるでしょう。やる気が起こらなかったり、赤ちゃんがかわいく思えないことさえあります。このような誰にでも起こり得るこころの変化をサポートすることは、お母さんだけでなく子供の成長においても重要です。そこで、当院で出産後の方には退院前と産後一か月健診時に産後うつ病の徴候がないかチェックを行い、必要な方に対して引き続きフォローアップしていきます。産科医だけでなく、助産師、地域の保健師などと協力して治療していきますので、何でもご相談ください。

外来受診について

初診・再診・セカンドオピニオン外来について

初診・再診・セカンドオピニオン外来については、外来受診ページをご覧ください。

外来担当医について

外来担当医については、診療部門・外来担当医表ページをご覧ください。

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